AI博覧会 Osaka 2025 イベントレポート 前編

AIのリアルイベント「AI博覧会」が今年も大阪で開催。3回目の出展となる株式会社アクセルの展示内容をお届けするとともに、今回は主催者である株式会社アイスマイリー代表取締役・板羽晃司氏にも直撃。AI博覧会が目指すイベントの形について聞きました。

ここに来れば、AIの現在地がわかる

AIポータルメディア『AIsmily』が主催する「AI博覧会」は、日本国内のAI関係企業や専門家が集まり、展示や公演、デモンストレーションを行うリアルイベント。3回目の開催となったOsaka 2025は、50社100製品以上が出展しました。

このイベントの目玉であるセミナーやカンファレンスは、2日間で50講演以上。前回よりも大幅にボリュームアップしたにもかかわらず、毎回多くのカンファレンスが満席となる人気ぶり。昨今のAIへの注目度の高まり、そして熱気を感じるイベントとなりました。

株式会社アクセルの今回のブースでは、開発中である「ailia DX Enterprise」をはじめとしたDXアプリケーションを展示。エッジAIの導入を検討する企業に向け、ソリューションの実演などを行いました。

今回の展示のアイチャッチとして注目を集めていたのが、くまのぬいぐるみのかたちをしたデジタルヒューマン「AIしていると言ってくれ」です。このデジタルヒューマンは、リアルタイム音声認識機能「AI Speech」によって人がしゃべりかけた内容をテキスト化し、それをChatGPTへ連携。返ってきた答えをくまがお喋りして答えてくれるというもの。アクセルが持つAIの技術を明快に、そして可愛く伝えるこのデバイスに、来場者が笑顔で話し掛けている姿が印象的でした。

それをフックに、ブースの奥にはエッジ推論用のソフトウェア開発キット「ailia SDK」や、DXアプリ「ailia DX Insight」などを展示。特に注目を集めたのは開発中の「ailia DX Enterprise」。ChatGPTの機能に、ailia独自の文章検索や画像検索、音声認識などの機能をプラスした「「ailia DX Insight」をオンプレミスで運用できるエッジデバイス向けのアプリケーションです。

「ailia DX Insight」がローカルLLMを使用する際に手元のPCにLLMとデータベースを持つのに対し、「ailia DX Enterprise」はオンプレミスのサーバにLLMとデータベースを置き、クライアントPCからブラウザで利用します。スペックが低いPCでもAIの推論処理に時間を掛けずに利用できることから、企業全体で一貫したAIの活用が可能となり、業務効率の向上やセキュリティ強化にも貢献します。

多彩なAI技術が集結したAI博覧会 Osaka 2025は、最新のトレンドや実用的な活用事例を体感できる貴重な機会。多くの来場者がAIの可能性を実感する場となりました。

AI博覧会が目指す、イベントの在り方とは。

イベントの終わりに、AI博覧会を主催する株式会社アイスマイリーの代表取締役・板羽晃司氏を直撃。同イベントの盛り上がりをどう捉えているのか。そして、今後の展望を聞きました。

——3回目となる開催で、回を重ねるごとに熱気が増していますね。

板羽晃司氏(以降、板羽氏):2024年3月に東京・お茶の水、8月に渋谷と開催してきましたが、来場者の方々の反応を拝見していると、毎回うれしくなりますね。今回、大阪で初開催ということで2000名ほどの来場者を目標としていたのですが、4500名以上の方々からの事前応募がありました。大阪の方々のAIに対する興味の大きさを実感しています。

——大阪の方が東京より反響が大きいかも、なんて声もありますが。

板羽氏:出展者の方たちにお話を伺うと、実際にそうみたいですね。東京よりも導入に前向きな方が多く、建設的なやり取りができているようです。来場者の方々の情報収集の熱意、勢いがすごいと聞いています。AI関連の展示会やイベントはどうしても東京の方が多いので、大阪にはまだまだ需要があるんだと思いますね。AIに特化したリアルイベントということでも、ご注目いただいているのかなと。

——初開催からまだ1年。その間にもAIはすさまじいスピードで発展していますが、社長から見て、どう思われますか。

板羽氏:2022年にChatGPTが出たばかりなのに、2024年はRAG(検索拡張生成)というキーワードが、さらに今年はAIエージェントが話題にあがるなど、AI界隈は常に新たなキーワードで盛り上がっていますよね。それだけ移り変わりも早い業界なので、情報のキャッチアップという意味で、皆さん学ぶ場、情報収集の場をいうのを欲しているのかなと思います。

——AI博覧会も、もともとはAIポータルメディア『AIsmiley』をリアルイベントとして形にしたもの。『AIsmiley』の注目度も上がっているのではないでしょうか

板羽氏:ChatGPTがリリースされたときにアクセスがかなり伸びて、一旦落ち着いていたかなと思っていたのですが、先ほども話に出たRAGやAIエージェント関連の話題を受けて、また伸びてきているなと感じています。そういったところで、いち早く情報をお届けするというのは今後も心掛けていきたいところです。

——AIが身近なハードに搭載され、より身近な存在としてAIが人々の生活に関わるようになってきています。その状況を客観的にご覧になって、期待されることはありますか?

板羽氏:インターネットやスマートフォンの登場のように、AIが社会に与えるインパクトはとても大きいものだと思っています。ですが、AIはインターネットにおけるPC、SNSにおけるスマホのように、それを扱う専用のデバイスというのがまだ生まれていません。今後、AIに特化したものが出てきたら、もっとすごいスピードで一般に広がるんじゃないかなと期待しています。例えば、イヤホン型やメガネ型のデバイスだけで欲しい情報がすべて手に入るようになるとか。もっともっと、これからAIを取り巻く環境は変わっていくと思います。

——アクセルの展示をご覧になって、いかがですか?

板羽氏:アクセル社さんはオンプレミスの環境、ローカルAIという特徴を持っていらっしゃいますが、実はそこを求めている企業さんはすごく多いんですよね。セキュリティ面などの強みも生かして、いろんな企業さんの力になっていただきたいなと思っています。

——最後に、規模も熱気も増しているAI博覧会ですが、今後はこのイベントをどう育てていきたいですか?

板羽氏:規模を大きく広げたいというよりも、いまは5000〜1万人規模で開催して、AIに特化した情報だけがぎゅっと凝縮したイベントにしていきたいと考えています。その理由としては、出展者と来場者がマッチングしやすいかたちが、いちばん良いと思っているからです。『AIsmiley』というメディアを運営するなかで、「人の顔を直接見て導入を決めたい」という要望を多くいただきます。Webメディアという性質上、それができないからこうしたリアルイベントを開催しているわけなので、あくまでも人と人の出会い、コミュニケーションをこれからも大切にしていきたいと思っています。

後編では、カンファレンスの様子をお届け予定。アクセルグループのax株式会社 寺田健彦と株式会社GAUSSの宇都宮綱紀が「人手不足改善&事故ゼロ。工場や建設向け最新エッジAI事情」をテーマに語ります。

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